贖罪





「これで四日連続か」




一颯は床で頭から血を流して死亡している被害者に手を合わせる。
室内は荒らされ、金目のものは全て無くなっている。
所謂強盗殺人事件だ。
今回のような強盗殺人事件は既に四件目で、連日起きている。




それと同時に、奇妙な出来事が世間を賑わせていた。
それはホームレスの支援団体、障害者施設、生活困窮者の支援団体の寄付が送られているというもの。
その寄付は金はもちろん、宝石や金塊、高価なブランド品と言ったもの。
金や高価なものというのはこれと言って奇妙とは言えないが、奇妙なのはそこからだ。





「瀬戸、被害者の盗品は何処に届いてた?」






「□△の就労支援施設です」







「宛名と包み紙は?」





「宛名は《avaritia》、強欲と書かれ、包み紙はクモの柄だったそうです」






「同一犯で決定だな」





被害者の遺体を検視官と共に見ていた汐里がそう言えば、一颯は頷く。
四件の事件は全て七つの大罪の強欲による犯行なのは一件目で分かっていた。
七つの大罪はこれまでも犯行が自分達の仕業であることをわざわざ形として残している。
罪の名前と罪のモチーフの生物のイラストや置物を。







余程捕まらない自信がある。
そう考えるだろうが、そうとも言えない。
何せ、これまでの七つの大罪の罪人は全員警察が逮捕している。
だが、一人は突然死してしまい、一人は神室に殺されてしまっている。
それでも、七つの大罪の罪人を逮捕できていることは神室の勢力を弱められていることに繋がるのだ。






「命を奪って、金目のものを奪う。奪った金目のものは社会的に弱いもの達へ贈られる。……善行のようで、悪行だな」






「金がなければ、世の中は回らない。でも、回すためには金が必要。金がないものは世の中から爪弾きにされる。嫌な世の中ですね」






「ボンボンのくせに庶民のことを分かってるじゃないか、浅川」






「東雲はああ見えて、庶民的な生活を心掛けてたんです。……まあ、だいぶかけ離れてた点があるのは否めませんが」






「あの家に住んでて何言ってるんだ?まあ、世の中の摂理としては金のある奴は裕福に暮らし、金のない奴は貧しく暮らす。それはどうしようもないこととも言えるな」






世の中は不平等だ。
どれだけ男女平等を呼び掛けても男の方が優遇される社会は変わらない。
どれだけ働き蟻のように忙しなく働いても稼ぎは変わらず、ただ上でふんぞりがえっている者ほど稼いでいる。
金のある者は傲り、金のない者はへりくだる。
本来人は平等であるにも関わらず、だ。








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