お日さまみたいな温かい君に包まれて
「失礼しまーす……」



そーっとドアを開けて部屋に潜入。


うわっ、なんか甘い匂いがする。
部屋に香水ばらまいてんのか?

東馬の影響なのかはわかんないけど、こういう甘い匂いは食欲が減るからあまり得意じゃない。

それよりも、石鹸とかマリン系とかの爽やかな匂いのほうが好み。


例えるなら……雪塚さんがつけてる石鹸の香りとか。



息を止めて机の上を捜索する。

積み上げられたスケッチブックをどかすと、波打ち際で笑い合っているカップルの絵が飛び込んできた。


これだ! 確か表紙が海だったはず!

いやぁ、近くで見るとすっげー綺麗だなぁ。
この表紙描いた人、美術の成績めっちゃ良さそう。

実玖や雪塚さんなら描けるかもしれないけど、美術の成績が2の俺には、こういう絵を描くのは夢のまた夢だ。



──数時間後。



「ただいま~。お兄ちゃん、本見つかっ……た?」



ドアの前で立ち尽くしている実玖。

その場にドサッとバッグを置き、慌てた様子で部屋に入ってきた。



「ちょっ……どうしたの⁉ 何かあった⁉」

「こ、この話、めちゃめちゃいい話だな……っ」
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