お日さまみたいな温かい君に包まれて
日は落ちてきてるけど、今日は晴れてるからまだ暑いし、またこの前みたいにフラついて倒れちゃったら危険だ。

真っ直ぐ目を見て答えると、プシューとドアが閉まり、バスが動き出した。



「……ありがとう。ごめんね、運賃が……」

「いいって! 気にしないで! 雪塚さんの体のほうが大事だから!」



こんな時までお金のことを気にするなんて……節約家なのか、ケチなのか。

今朝、炎天下の中歩いてきてたからな。
宿題に加え、受験勉強もあるから、疲労が溜まっていたのかも。

頑張り屋さんだけど、お金のために体調を犠牲にしてほしくないな……。




数分後、停留所に到着。

つまずいて転倒しないよう、彼女の手を引きながらバスから降りた。

日陰を歩きながらゆっくり歩を進めていく。


前回に比べたら、呼吸は安定しているからそこまで酷くはなさそう。
だけど、自覚症状がない熱中症もあるって聞くから、油断は禁物だ。


しばらくすると、記憶に新しい白黒の家が見えてきた。



「本当にありがとう。お金……返すね」

「いいよそんな! とりあえずゆっくり休んで!
家に……誰かいる? 弟くんとか」



玄関前の階段に腰を下ろして財布から小銭を出そうとする彼女の手を止めて尋ねた。
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