お日さまみたいな温かい君に包まれて
あぁでも、心霊現象が起きているんだとしたら、この部屋も冷たい空気が漂っているはず。

幽霊の仕業じゃないとしたら他の理由……熱帯夜とか?



「実はこの前、清水くんが夢に出てきたんだ」

「えっ! 俺が⁉」



水を飲み干した彼女が静かに口を開いた。

昔から夢は全然見ないし、見てもすぐ忘れるタイプだけど、雪塚さんの夢は今も超鮮明に覚えている。


内容は、デートしたり、告白されたり、抱きしめ合ったりと……数回。完全に願望夢ってやつだ。



「どんな内容だったか覚えてる⁉」

「…………清水くんに置いていかれる夢だった」



寂しい目で呟いた後、彼女は唇をギュッと噛んで俯いてしまった。

コップを持つ腕の内側にある、治りかけのアザに視線を落とす。


以前見た青黒い色ではなく、茶色が混じった黄色になってて、痛々しさはほとんど消えていた。




「……どこにも行かないよ。俺、ここにいるから。そばにいるから」



隣に座り、「大丈夫だよ」とコップを握る華奢な手に自分の手をそっと重ねた。

寂しさと悲しみが混ざった瞳が、この家の空気と一致して、胸がよりいっそう締めつけられる。
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