お日さまみたいな温かい君に包まれて


「好きです」と言いかけようとした瞬間、突然彼女の手が口元に伸びてきた。


えっ……何? どういうこと?

なんで今口塞がれてるんだ?


真っ白になった頭の中にハテナマークが次々と現れ、脳内を埋め尽くしていく。



「……っ、ごめん! 口元に蚊がいて……いきなりごめんね!」

「あぁいや……ありがとう」



ビックリしたぁ……。


蚊の野郎め……告白の邪魔するんじゃねーよ!

つーか、こんな高いところまで来んなよ!
下のほうがたくさん血吸えるだろうが!


もう1度告白しようしたけど、地上がすぐそこまできていたので泣く泣く断念した。



「さっきはごめんね。何か言いかけてたよね……?」

「大丈夫。大したことじゃないよ。雪塚さんのこと、たくさん知れて良かったなって言いたかっただけ」



そう答えると、彼女は少し照れくさそうに視線を逸らした。

今まで雪塚さんから昔話を聞く機会がなかったから、知れて良かったと思う。


けど……嘘をついたからか、胸がチクチク痛み始めた。


そうだよな。大したことなんかじゃ全然ないのに。

やっぱり俺、嘘つくの向いてないや。
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