お日さまみたいな温かい君に包まれて
バスを降りて帰路に就き、そっと玄関のドアを開けて洗面所へ。

バッグからタオルを出そうとしたけれど……。



「……やめとこ」



どこへ行ったか怪しまれそうだったので、洗濯かごに出すのはやめた。

これは自分で洗おう。



──カチャ。



「おかえり」

「っ……ただいま」



扉を開けると、気味の悪い笑みを浮かべた母が立っていた。

うわ、出てくるまで待ち伏せしてたわけ? 気持ち悪っ。



「遅かったね。朝からどこ行ってたの?」

「……どこでもいいでしょ」



なにが「遅かったね」だ。夜ならまだしも、まだ6時半。それに冬じゃなくて夏なのに。

母は私が毎回出かける度に、どこに行っていたか、誰といたか、何をしていたかをしつこく聞いてくる。


昔は全部伝えてたけど、『もうあそこに行くのはダメ』とか、『今月は遊ぶの禁止』とか、だんだん口を挟み始めた。

やめてほしいって言ったけれど、『心配だから』の一点張りで、全く話を聞いてくれない。

しまいには、会ったこともない友達の悪口まで言い始めたため、黙って外出するようになった。
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