お日さまみたいな温かい君に包まれて
「ねぇ、葵ちゃんは何が好きか知ってる?」

「ええ~っ、聞いたことねーからなぁ」



雪塚さんの好きな食べ物……何だろう。

これまで何回か一緒に食事しに行ったけど、お肉も野菜も食べてたしな。


ひとつだけわかるのは、うちのお母さんが作るクッキーが好きってことだけ。

でもお菓子じゃなくて晩ご飯のメニューだからなぁ。



「体に優しい物なら何でもいいんじゃね? 味噌汁とかさ。つーか直接聞いたらいいじゃん。お昼から来るんだし」

「そうだけど……人気の物はすぐ売り切れちゃうから早めに買いたいのよ」



悩んだ様子でチラシをまとめ始めた母。


まぁ、気持ちもわかるけど。

雪塚さんなら、こういうごちそうよりも、肉じゃがとか焼き魚みたいな、家庭的な晩ご飯のほうが喜びそう。

お寿司とか高いお肉だと、「いいんですか⁉」って逆に遠慮しそうだし。



「景斗は……今日も晩ご飯は食べてくるのよね?」

「うん。あ、もし高いお肉買ったら俺の分も残しといて」

「はいはい」



チラシが片づけられ、まっさらになったテーブルが顔を出した。


大丈夫だよ、お母さん。

それだけ気持ちが込もっていれば、きっと喜んでくれると思うよ。
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