お日さまみたいな温かい君に包まれて
停留所に着き、急いでバスを降りて猛ダッシュで家に向かう。

っ……荷物があるからちょっと走りづらい。

負けるな自分! 元運動部の脚力はまだ衰えていないはず!

雪塚さんが、花火が待ってるんだ! 走れ!




「ただいま……っ!」

「あ、おかえりお兄ちゃん」



玄関を介さず、そのまま庭へ。膝に手をついて、乱れた呼吸を整える。

お父さんとお母さんは先に戻ったみたいだけど、まだ花火は残っていた。

良かったぁー。間に合ったぁー。



「おかえり清水くん」

「ただいま雪塚さ……」



顔を上げると、そこには浴衣姿の雪塚さんがいた。


っ……なっ、ええっ⁉ なんで浴衣着てるの⁉
めちゃめちゃ可愛いけど……浴衣着てくるなんて聞いてないよ⁉



「お兄ちゃん、花火の準備しておくから着替えてきなよ」

「あぁ……うん」



呆然とする俺にニヤリと口角を上げた実玖。


……お前が仕込んだんだな。

まったく、とんだドッキリだ。
でも……サンキュー。



急いで部屋に戻り、クローゼットから浴衣を取り出す。

キュッと帯を締めて、軽く髪の毛を整えて完成っと。

着付けの練習してて良かった。
悪戦苦闘した時間が無駄にならずに済んだ。
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