お日さまみたいな温かい君に包まれて
恐る恐る視線を戻してみると、雪塚さんは少し俯き気味でスマホを差し出していた。

なんだ、あっちも目逸らしてたのか。助かった。


……いや、俺が目を逸らしたから、それで気まずい空気が流れちゃったのかも。


違うんだ雪塚さん。
本当は今ここで声を上げて感情を解放させたいぐらい嬉しいんだ。

嫌じゃなんかじゃないんだよ……!



「うんっ、いいよ。撮ろうか」

「……ありがとう」



控えめに顔を上げた彼女と目が合い、心臓がバクンと飛び跳ねる。

部屋で撮ろうかなと思ったが、それだと完全に2人きりになってしまうので、階段の踊り場で撮影した。


危ねぇ……もしここで部屋に入れてたら、それこそ暴走して抱きしめちゃってたかも。

ふぅ、我ながら賢明な判断だった。


庭に下りて、実玖と3人で円になって花火を楽しむ。



「え? 雪塚さんの提案だったの?」

「うん」



どうやら、花火大会に行けなかった代わりに、せめて浴衣だけでも着て、一緒にお祭り気分を味わえたらと考えていたようで。

実玖も俺が花火を買ったことを思い出して、「じゃあ、浴衣着てみんなで花火しよう!」って話に至ったと。
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