お日さまみたいな温かい君に包まれて
美しさに見とれること数十秒。

四方八方に暴れていた火花が次第に細くなり、火の玉も光を失って落下した。



「終わっちゃった。次が最後だっけ?」

「うん」



袋から2本取り出して、1本を彼女に渡し、もう1度着火させる。

何やってんだ俺は。
雪塚さんばっかり見て、全然花火見てねーじゃん。

これで最後なんだから、ちゃんと目に焼きつけよう。



「明日もバイトなんだよね?」

「うん。でも昼からだから、午前中の間ならゲームできるよ」

「やった! じゃあ明日は早く起きようっと!」



弾ける火花を眺めながら会話を交わす。

「来年は花火大会行けるといいね」って言おうとしたけれど……こんな可愛い浴衣姿を見たら、誰にも見せたくないなぁって思っちゃった。


あっちからしたら、俺はただのクラスメイトで友達で、そもそも彼氏でもないのに。

……独占欲強すぎ。



「清水くん、今日はありがとう」

「っ……」



ふと隣に顔を向けると、弓なりに細めた目と視線がぶつかった。

バチバチと音を立てていた火花が弱まり、火の玉が揺らぎ始める。


もうすぐ終わってしまう。

まだ終わらないで。まだ俺は──。
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