お日さまみたいな温かい君に包まれて



「雪塚さん」

「ん?」

「好き」



まだこの時間が終わってほしくなくて。

もう少しだけ一緒にいたいって。

そう心の中で強く叫んでいたら、自然と口が動いていて。



「俺、雪塚さんが好きだよ」



視線を合わせ、もう1度伝えた。


けれど──。



「っ……あっ……」



口にした途端に後悔が押し寄せてきた。


月の光に照らされた彼女の顔は、どこか悲しげで、切なくて。

揺らぐ瞳の奥には苦しみが渦巻いていた。




『……どこにも行かないよ。俺、ここにいるから。そばにいるから』

『……ありがとう』



この目の色は、雪塚さんの家で手を重ねた時と同じ……。


違う、そんな悲しい顔にさせたかったわけじゃない。


俺はただ──あの時言えなかった気持ちを伝えたかっただけで……。



「っ……ごめん! 今のは……忘れて」



気づいたら火の玉は消えていて、2人の間には白い煙だけが静かに舞っていた。
< 187 / 239 >

この作品をシェア

pagetop