お日さまみたいな温かい君に包まれて
沈黙を貫いていた父が静かに口を開いた。



「っ……なんで⁉」

「約束を守らないやつに、嘘つきに金は出さん! 大体お前はもう人生失敗してるんだから諦めろ‼」

「勝手に決めつけないで‼」



受験に失敗したら人生失敗なの……?

お父さんの同級生の中にも、試験に落ちて志望校に行けなかった人も少なからずいるはずなのに。

もうコイツは人生終わったなって、内心バカにしてたわけ……⁉



「帰省も自分だけ逃げて友達と楽しんで。そうやって嫌なことから逃げてたら、ろくな大人にならないぞ‼」


「逃げてない! この前1人で行ったよ! っていうか、顔合わせてケンカするぐらいなら行かなきゃいいじゃん! あんなうるさい環境でも勉強しろって、はかどるわけないよ! 大体、『いい学校に行って、いい仕事』って、考えが古いんだよ!」

「口答えするな‼」



ガンッ! と額に衝撃が走った。

足元にはテレビのリモコンが落ちていて、電池が転がっている。


突然すぎて、逃げ場がなくて避けきれなかった。

じんじん痛む額を押さえながら両親をキッと睨む。



「葵、お父さんに謝りなさい。そもそも、誰がお金を出してあげてると思ってるの? 誰のおかげで学校に行けて、勉強できて、生活できてると思ってるの? 親がいないと何もできないくせに」
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