お日さまみたいな温かい君に包まれて
再び心臓がドクンと脈を打ち、一瞬にして全身の血の気が引いていく。

父は暴れ出した母を力ずくで止めている。


ガラスを握る手から赤い液体が流れて腕を伝い、カーペットに小さなシミが広がった。



「あんたばっかりズルい‼ お母さんだって、お母さんだって……‼」

「葵! お母さんに謝れ! 聞いてんのか⁉ 早く謝れ‼」

「……っ、あっ……」



口を動かそうにも声が出ない。


ここにいたら危ない、早く逃げろ!


両親と目が合った瞬間、もう1度直感が叫び、震える手で荷物を持って、おぼつかない足取りでリビングを出た。




──バタン!



「はぁ、はぁ、はぁっ……」



大丈夫、ここまで来ればもう大丈夫。
よく頑張ったね、よく耐えたね。


部屋のドアに寄りかかり、乱れた呼吸を整える。


まだ興奮しているから、謝ったとしても耳に届かないだろう。

謝るのはもう少し時間を置いてからにしよう。


ようやく呼吸が落ち着きを取り戻したので、荷物を片づけるため、床に腰を下ろした。


あれ……?
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