お日さまみたいな温かい君に包まれて
「えっ……だ、誰に?」
「…………親に……っ」
答えた声は少し震えていて、目には涙が溜まっていた。
「『佐伯さん家から、男の人の怒鳴り声と女の子の泣く声が聞こえた』って、彼女の家の近くに住んでた友達から聞いたのよ……」
母は溢れた涙をティッシュで拭いながら嗚咽を漏らし始めた。
母の他にもアザを見た生徒がいて、先生に殴られたんじゃないかとか、誰かにいじめられてるんじゃないかとか、色んな噂が飛び交ったそう。
「そ、それでどうなったの⁉」
「先生に相談して、助けようとした。けど……『確実な証拠がないから、見守るだけにしておこう』って……」
友達は怒鳴り声を聞いただけで、殴られている現場を見たわけじゃない。
勝手に虐待だと判断してしまうと、それこそ逆上してかえって危険だと。
そう判断を下され、助けたくても助けられなかった。
と、母は震えながら口にした。
「助けられないなら、せめて元気づけようと思って、毎日話しかけたり、部活にお邪魔したりしてたの。でも、面談の時に彼女の母親を見て、加害者は父親だけじゃないのかもって思った」
話すうちに、雪塚さんのお母さんにお兄さんがいると判明。
ひとり暮らししているとのことで、怒鳴り声は父親だったのではないかと予想。
ということは……。