お日さまみたいな温かい君に包まれて
「な、何話したの……?」
「特に……『最近どう?』とか、世間話とか。『お母さんと仲直りできた?』みたいな、家族の話はしなかったよ」
ええっ? じゃあどうして泣いてたんだ?
世間話の中に、昔の出来事を彷彿とさせる話があったのかな。
考えていると。
「……ごめん、話聞いちゃった」
「……実玖!」
実玖がドアの隙間からそっと顔を覗かせた。
その顔は今にも泣き出しそうで、話を終始聞いていたことがうかがえる。
「実は先輩、私の前でも泣いてたの。雪塚先輩みたいなお姉ちゃんが欲しいなって思って、冗談で、『清水葵になりませんか?』って言ったら泣いちゃって……」
実玖の目からポロッと涙がこぼれた。
……おい、冗談が過ぎねーか。
それ、「お兄ちゃんと結婚しませんか?」って言ってるようなもんだぞ。
「なんだよ……泣くほど嫌だったってわけ?」
「違うよ、嬉しくて泣いてたんだよ。でもその後に、『私も清水家に生まれたかったな』って、ちょっと寂しそうに言ってたから……」
母は俯いた実玖にティッシュを渡し、背中を擦り始めた。