お日さまみたいな温かい君に包まれて
「えっ……いいんですか?」

「ええ。その様子だと急用みたいですし」



にこやかに手招きされ、恐る恐る中へ。

外は蒸し暑いにも関わらず、家の中の空気は、以前訪れた時以上に冷めきっていた。


──ドクン、ドクン、ドクン。


奥へ進んでいくにつれて、胸の鼓動が激しさを増す。


俺、顔色悪くないかな。顔引きつってないかな。

幽霊はいないはずのに、さっきから冷や汗が止まらない。




「暑い中来てくれてありがとう。さ、どうぞ」

「ありがとうございます……」



リビングのソファーに腰かけ、キンキンに冷えたお茶をもらった。


玄関や廊下に比べて、やっぱりここだけは異常なぐらい冷たい。
というか、もう凍りついている。


雪塚さんと弟くんは、こんな息苦しい環境の中で育ってきたの?

今までずっと重圧に耐えながら過ごしてきたの?



「あっ、ごめんなさい、そろそろ行かないと。葵には連絡しておきますので、ゆっくりしていってください」

「はい……ありがとうございます」



マイバッグを持って部屋を出ていく彼女の母親に頭を下げる。

そして、玄関が閉まる音がした瞬間、急いでお茶を飲み干し、足早にリビングを後にした。
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