お日さまみたいな温かい君に包まれて
親にさんざん酷い扱いを受けてきたのに、感謝の気持ちを伝えたって……健気すぎ。

もっと怒ってもいいのに優しすぎだよ。


でも……無事で良かった。
こうやってまた笑顔を見ることができて、本当に良かった。



○○◎



電車に揺られること約20分。降車駅に到着。

少し時間をずらし、人混みを避けて駅を出た。



「雪塚さんはここ来たことある?」

「うん、何度か……え、もしかして海に行くの?」

「当たり!」



目を丸くしている彼女の手を取って歩き出す。

この街は駅から歩いて数分のところに海岸があり、その上オシャレなお店も多く、デートスポットと言われている。


2人で何度も遊びに行っているのに、なぜわざわざここを選んだかというと──。



「ねぇ、お昼ご飯ってまさか海で食べるつもり……?」

「うん! あ、一応レジャーシート持ってきたから安心して!」



横断歩道を渡り、看板が指し示すほうへ向かうと、風に乗って潮の香りがふわっと漂ってきた。

海岸には、夏休み中の子ども達や家族連れ、カップルの姿がチラホラ。

波打ち際ではしゃいでいる人もいれば、砂浜に座ってのんびりくつろいだり、お昼ご飯を食べている人もいる。
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