お日さまみたいな温かい君に包まれて
「あ、お母さんから電話来てたからちょっと電話してくる」

「おぅ、いってらー」



アメを舐めながら東馬を見送り、机の上を片づける。

次は古典をやるんだっけ。プリントどこにやったかな。


すると、バッグを漁る音に紛れて、ポツポツと水滴が落ちる音が聞こえてきた。



「うわっ、雨降ってきた!」



カーテンを開けると、空には灰色の雲が広がっていた。

窓ガラスに水滴がひとつふたつと増えていく。


どうしよう。
今日は夜から雨が降るって予報だったから、傘持ってきてねぇ……。



「あっ、雪塚さんは大丈夫?」

「ん……? あぁうん。雨ガッパあるから……」



眠たそうな返事。

相当眠いのだろうか、まぶたがピクピクしている。


やっぱり夜遅くまで勉強してて、あまり眠れてないのかな。


うつらうつらしている彼女を眺めていると──右手の甲に、青黒い模様がチラリと見えた。



「雪塚さん、その手……」



と言いかけた途端、閉じかけていたまぶたがカッと開いて。
慌てた様子でカーディガンの袖を引っ張って手の甲を隠された。

まさか、今度は手……?



「また踊っててぶつけたの……?」

「あ……えっ、と……」
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