お日さまみたいな温かい君に包まれて
エスカレーターに乗って、去年の花火大会に行った時の話を語る。


毎年夏休みと春休みに遊んでいる、幼なじみの由菜(ゆな)ちゃん。

小学生の頃はよく遊んでたけど、中学に入ってからは、お互いに部活動で忙しくなって、遊ぶ頻度が減っちゃったんだよね。

今年も遊びたいけど、3年生で進路のこともあるだろうから、会うのは難しいかな。



「幼稚園からか~。雪塚さんは小さい頃、どんな子どもだったの?」

「あー……そうだねぇ……」



困った。何て答えようか。


幼稚園も小学生の頃も、人付き合いが下手だったため、あまりいい思い出がない。

クラスメイト達と時々遊んではいたけれど、なかなか馴染めなくて、結局ひとりで過ごしてたんだよね……。

どうしよう、楽しい話題を出したいのに、話せる話がない。



「あ、本読んだり、絵を描いてたかな」

「おぉ~っ、さすが美術部! 昔から才能爆発させてたんだね~」



感動している様子の景斗くん。

遠い記憶を辿っていると、部屋で読書していたことと、スケッチブックに絵を描いていたことを思い出した。


振り返ってみたら、小さい頃から好み変わってないかも。今も本も絵も好きだし。

……最近は勉強ばかりしてるから、あまり楽しめてないけど。

とりあえず乗り切れて一安心。
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