お日さまみたいな温かい君に包まれて


「あ、パンできたてだって! 見にいこう!」

「ええっ! ちょ、ちょっと待って……」



パンの匂いにつられて走り出した景斗くんの後を追う。


また試食しに行くの⁉

もうすぐ夕方なのに、晩ご飯入らなくならないのかな……。



●●●



「ん~! 今日はいい買い物した~!」

「よ、良かったね……」



パンが入った袋を抱きしめるように持って、幸せそうに匂いを嗅いでいる。


お土産に家族4人分のパンを購入したそうだ。

またも優しさが見えて心が温まる。


と同時に、今度は少し切ない気持ちが湧き上がってきた。


すごいなぁ。羨ましいなぁ。

家族のことが大好きじゃなきゃ、なかなかこんなことできないよ。

景斗くんの明るくて家族思いで優しいところに惹かれたのに、対して私は……。



「雪塚さんは試食しなくて良かったの?」

「うん。晩ご飯入らなくなりそうだから。清水くんは平気なの?」

「うん。俺食べるの大好きだから」



サラッと口にした彼に思わずフフッと笑みが漏れた。

食いしん坊だって自覚してたんだ。
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