お日さまみたいな温かい君に包まれて
口をへの字にする東馬をまぁまぁとなだめるも、顔は険しくなるばかり。

むしろ、「クワガタに例えるな!」と怒られてしまった。


いつもはいじってもそこまで怒らないのだが、今回は苦手な虫と結びつけてしまったため、機嫌を損ねたようだ。



「あ! 雪塚さんおはよう!」



ホームルーム開始の5分前に雪塚さんがやって来た。


珍しい。普段はこの時間にはとっくに来てるのに。

朝から雨降ってるし、それに自転車だからゆっくり来たのかな?



「おはよう。あれ? 西尾くんどうしたの?」

「雪塚さん聞いて……! さっき景斗が俺のこと、コクワガタって言ってきたんだよ!」

「ク、クワガタ……?」



口を挟もうとしたら、入る隙もないくらい早口でしゃべり出した。

しまいには、文集にふざけて書いたことまで……。



「ニジイロクワガタならまだしも、コクワガタって……」

「虫嫌いにしてはよく知ってるな」



そうツッコむと無言で睨まれた。

本能的にこれ以上は危険だと察知。もう虫の話と身長いじりするのはやめよう。



「オウゴンオニクワガタもわかるけど、清水くんならギラファノコギリクワガタのイメージがあるかな」
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