お日さまみたいな温かい君に包まれて
「いえ、あと1時間だけですし。これ以上休むと勉強に支障が出そうなので戻ります」

「そう……?」



「大丈夫ですよ」と先生に笑いかける雪塚さん。

なんかめちゃめちゃ心配されてない?
相当体調悪かったのか? 空元気じゃないといいんだけど……。



放課後になり、急ぎ足で昇降口へ向かう。


外に出て空を見上げると、視界いっぱいに怪しい雲が広がっていた。

雨は叩きつけるように強く、風も吹いている。

このまま帰ってもびしょ濡れになるだろう。


昇降口に来た生徒達も、外の様子を確認した後、中へ引き返している。


いくら明日が休みだからって、ずぶ濡れで帰りたくはない。
弱まるまでしばらく待つか。



(きびす)を返して教室に帰還。

部活動生を除いたクラスメイト達が、たわいもない話をしながら雨宿りしている。


グゥゥゥゥ……。


あー、腹減った。早く帰りてぇ。
サーサー降りになったら急いで帰ろう。



「ん……?」



ジメジメした空気を吹き飛ばそうと下敷きを取り出したその時、一瞬ほのかな香りが鼻腔をくすぐった。

今のは……シソ……?
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