二度目まして、初恋
きゅるり、彼女の視線がディスプレイへと落ちて、文字を追う。
「新エリア解放プレオープンしょうた……え!? 待って! これってあの噂の……!?」
「噂の、チケット取るのに二年待ち必須なあのテーマパークの招待状。200名100組1日貸し切りプレオープン」
「……おお……おおお、」
「行きてぇ?」
「行きたいに決まってるじゃない! 何なの!? 自慢!? むかつ」
「行くか?」
「く…………え?」
「行くか?」
「……」
「招待されたのは俺だから、俺と、になるけどなァ」
ひらり、ひらひら。
薄笑いを浮かべて、携帯をふるふるとふれば、街灯と月明かりが照らす視界の中で、ナチュラルなメイクが施された顔がくしゃりと歪む。
すげぇ既視感。
やはりこれくらいではつれやしないのかと諦めかければ、しかめっ面のまま彼女は視線を左右に数度さ迷わせてから、意を決したような表情をして、俺を見た。
「……行く。行きたい」
「……おけ。日時指定されてっけど、平気か、この日」
「有給取る」
「そんなにか」
「そんなによ」
「……へぇ」
「何よ」
「そんなに、ねぇ……?」
「……なに、よ」
「んじゃあ、帰るか」
「あ、うん。じゃあ、ばいば」
「家まで送るに決まってんだろ」
「は!?」
「俺、このテーマパーク行ったことねぇからよォ」
「……は、ぁ?」
「有給取ってまで行きてぇって思える魅力があるんだろ? それ、教えてくれよ」
「……な、なん、」
「歩きながら……な?」
「くそが!」
しかしそれは、ほんの二分足らずで、苦虫を五億匹くらい噛み潰したような表情に変わった。