二度目まして、初恋
ごちゃごちゃと何やら言われている気がするけれど、一切合切それらを無視して身仕度を整え、「世話になったな!」と握り潰した万札を投げつけ、そいつの家を出た。
「……くっそ……相変わらず顔が好み過ぎてムカつく」
中学三年のときのクラスは、全員と言っても過言ではないくらい、男女問わず仲が良かった。そのせいか、同窓会という名の集まりが、卒業してから十年ほど経った今でも半年に一度ある。
だから、件の男、染谷匡に会うのだって何年ぶりとかそんなんじゃない。なんなら、前回の同窓会で会ってる。いや会ってるというよりかは、見た。たいした会話はしてない。だって記憶にないから、つまりはそういうことだ。
見たこともない道を、怒りと勢いと勘で突き進みながら、ぼんやりと昔を思い出す。
染谷匡。私の、初恋。中学二年の夏に自覚して、一年とちょっと寝かせて、冬休み前に告白した。結果は惨敗だったけれど、後悔はなかった。
「……きれいな思い出で終わらせてたいのに」
高校は別。だからもう会うことないだろうとたかをくくっていれば、中学を卒業した八ヶ月後にはもう同窓会だ。私は忘れていた。団結力と行動力が、あの当時のクラスの自慢だったことを。お酒を飲めるようになるまではファミレスでご飯を食べるだけの可愛らしいものだったけれど、それでも、初恋というものはなかなかにしぶとく根付いて離れないものである。
「……言わない、のは……卑怯……だよね」
忘れたいがためだけに付き合った初めての彼氏とは、たった二ヶ月で破局。その次は二ヶ月半。その次が三週間。始まりは相手から、そして終わりも相手から。「他に好きな奴いるだろ」決まり文句かのように吐き捨てられるその言葉は、いつだって私の心を容赦なく抉ってきた。