二度目まして、初恋
追う者と追われる者

 最初のチャンスをふいにしたのは、恋の【こ】の字も知らないクソガキな己だった。

「……さ、てと、」

 投げつけられたくしゃくしゃの万札のシワを綺麗に伸ばして、ベッドサイドのチェストへとしまう。代わりに、万札を投げた女、戸津井(とつい)奏海(かなみ)の社員証をそこから取り出した。

「すんなり別れててくれりゃ、いいんだけどなァ」

 (さい)は、投げた。思いどおりに事が運べば文句なしだが、そう上手くいかないのが人生というもの。己の投げたそれがどう転がってくれるかなんて、誰にも分からない。くつりと喉を鳴らして、余所行きの笑みを浮かべた彼女にそっと口付けた。
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