桜の木の下で、また君を待っている
それからの1週間は早く、卒業式の予行練習、最後の授業とあっという間に日が経った。

そして、今日は卒業式。

静かな体育館に、1人1文の別れの言葉が響く。
私も、息を吸って声を出す。
少し涙が混じったような、強がったような声が体育館全体に響いた。
あの下校の放送のように、私だけの声が、この空間に交わる。

誰かが弾きはじめたゆったりとしたピアノのメロディーは、どこまでも澄んでいた。

卒業式が終わって教室で写真を撮って、私たちは校舎を出た。
5年生に見送られながら、校門を出る。
まあそのあと、私たちはまた校舎に戻ったのだけど。

私は親友の木下華子と写真を撮ったり、先生方と写真を撮ったりしながら、山河くんを探していた。
最後ぐらい、ちゃんとお別れの言葉を言いたいのに。
いつも曖昧だった最後に、区切りをつけたい。

私は1人で校門から離れて、心当たりのある場所を探すことにした。
5年生がかたまって話している場所、放送室、中庭。
彼は一番最後に行った桜の木の下にいた。
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