ONLYYOU~赤ちゃんのパパは脳外科医、愛してはいけない人を愛してしまいました。~
プロローグ
この出会いは神様の悪戯。
誰も来ないはずの院内の裏庭にまさかの相手が立っていた。
「母猫はどうした?」
「え、あ…この子は母猫とはぐれてしまったようで」
ずっと母猫と兄弟の仔猫ちゃんたち五匹でいつも行動していた。
でも、二、三日前からこの子一匹しか姿を見せなくなっていた。
私は慌てて顎下にずらしていたマスクを上げて、恋人の雄平に殴られた口許の痣を隠した。
彼は部屋から持って来た猫用のツナ缶を夢中で食べる仔猫の首根っこを掴んで、そのまま腕の中に抱っこした。
「コイツ…右目…怪我してるな…」
此処は日本の医療の最高峰と言われるスーパードクターが集う『東亜医科大付属病院』の敷地内。
彼は『脳神経外科』の医師・伊集院和寿(イジュウイカズ)先生。
父親はこの病院の院長を務める伊集院千歳(イジュウインチトセ)名誉教授。
院長の一人息子。彼は若いながらも院長と同じく腕利きのドクター。
「猫は専門外だ…知り合いの獣医師に診せるしかないな…問題は君だ」
「えっ?」
彼は立ち上がった私のマスクに手を伸ばして、口許の痣を覗き見た。
至近距離に見える端整な彼の顔。
全身に熱が帯びる。
「その口許の痣…酷いな…」
「だ、大丈夫です…」
「いいから…来るんだ!」
彼は強い口調で言って、私に仔猫を渡す。
「仔猫を君のジャンパーの懐に隠してくれ」
「あ、はい」
私はミャーミャ―餌を求めて啼く仔猫ちゃんを作業服のジャンパーの懐にそっと入れた。
誰も来ないはずの院内の裏庭にまさかの相手が立っていた。
「母猫はどうした?」
「え、あ…この子は母猫とはぐれてしまったようで」
ずっと母猫と兄弟の仔猫ちゃんたち五匹でいつも行動していた。
でも、二、三日前からこの子一匹しか姿を見せなくなっていた。
私は慌てて顎下にずらしていたマスクを上げて、恋人の雄平に殴られた口許の痣を隠した。
彼は部屋から持って来た猫用のツナ缶を夢中で食べる仔猫の首根っこを掴んで、そのまま腕の中に抱っこした。
「コイツ…右目…怪我してるな…」
此処は日本の医療の最高峰と言われるスーパードクターが集う『東亜医科大付属病院』の敷地内。
彼は『脳神経外科』の医師・伊集院和寿(イジュウイカズ)先生。
父親はこの病院の院長を務める伊集院千歳(イジュウインチトセ)名誉教授。
院長の一人息子。彼は若いながらも院長と同じく腕利きのドクター。
「猫は専門外だ…知り合いの獣医師に診せるしかないな…問題は君だ」
「えっ?」
彼は立ち上がった私のマスクに手を伸ばして、口許の痣を覗き見た。
至近距離に見える端整な彼の顔。
全身に熱が帯びる。
「その口許の痣…酷いな…」
「だ、大丈夫です…」
「いいから…来るんだ!」
彼は強い口調で言って、私に仔猫を渡す。
「仔猫を君のジャンパーの懐に隠してくれ」
「あ、はい」
私はミャーミャ―餌を求めて啼く仔猫ちゃんを作業服のジャンパーの懐にそっと入れた。
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