レジーナ・フルレ
「何故、花が咲いている! 他に花は無かったと聞いて……」
「お言葉ですが、その話は誰に聞いたんですか?」
私の言葉に、側近は「しまった!」という顔をした。
「確かに、彼の研究室には花は無かったかもしれません。『彼の』ところには」
この花は、私の研究室にあった蕾を咲かせたものだった。
蕾がある事を知っているのは、私と助手のハナだけ。それ以外の人間は、研究室には一歩たりとも入れさせなかった。
「恐らく、報告した人が間違っていたんだと思いますよ。例えば、『彼の研究室を管理している人』とか」
「では、今度こそ失礼します」と、私は出て行った。
私の背後では、顔を真っ赤にした側近が、「そうなのか!?」と、国王に詰め寄られていたようだった。
そんな彼らを無視すると、私はハナを連れてこの場を後にしたのだった。「ま、待ってくれ〜!」
私達の後ろから、ハナと共にいた研究者が追いかけてきた。
「君の手柄だろう!? 爵位は!? 名誉は!?」
「そんなものは必要無い。私にはハナ君がいれば充分」
私が無視して歩いていると、「でも!」と研究者は縋り付いてきた。
「それよりも、助手を放っておいていいのか? 今頃、貴方の研究成果に手を出しているぞ」
恐らく、ハナに罪を被せようとしたのは、この研究者の助手だ。
第1発見者のフリをして、最初に現場に駆けつけたハナに罪を被せようとしたのだろう。
それを指摘すると、研究者は言葉に詰まったようだった。
「う、そうだな……。けれども、やはり、わたしだけが貰う訳にはいかない! 後で必ず連絡しよう!」
私は適当に返事を返したのだった。
すると、これまで黙っていたハナが「先生」と、声を掛けてきたのだった。
「先生、あの、私……」
「ハナ君」
ハナは顔を上げると、私をじっと見つめたのだった。
「……帰ろうか」
「はい!」
ようやく笑ったハナに、私も笑い返したのだった。
ーーこれが、かつて何も植物が無かった「レコウユス」に、最初に花を咲かせたフルレ男爵の話である。
フルレ男爵が咲かせた「レジーナ・フルレ」は、レコウユスの広い地域で咲く事になる。
「惜しみない愛情」と「親愛」。
この2つの花言葉を持った「レジーナ・フルレ」は、男女の恋の花とも呼ばれるようになるのだった。
それは、まだまだ先の話ーー。
「お言葉ですが、その話は誰に聞いたんですか?」
私の言葉に、側近は「しまった!」という顔をした。
「確かに、彼の研究室には花は無かったかもしれません。『彼の』ところには」
この花は、私の研究室にあった蕾を咲かせたものだった。
蕾がある事を知っているのは、私と助手のハナだけ。それ以外の人間は、研究室には一歩たりとも入れさせなかった。
「恐らく、報告した人が間違っていたんだと思いますよ。例えば、『彼の研究室を管理している人』とか」
「では、今度こそ失礼します」と、私は出て行った。
私の背後では、顔を真っ赤にした側近が、「そうなのか!?」と、国王に詰め寄られていたようだった。
そんな彼らを無視すると、私はハナを連れてこの場を後にしたのだった。「ま、待ってくれ〜!」
私達の後ろから、ハナと共にいた研究者が追いかけてきた。
「君の手柄だろう!? 爵位は!? 名誉は!?」
「そんなものは必要無い。私にはハナ君がいれば充分」
私が無視して歩いていると、「でも!」と研究者は縋り付いてきた。
「それよりも、助手を放っておいていいのか? 今頃、貴方の研究成果に手を出しているぞ」
恐らく、ハナに罪を被せようとしたのは、この研究者の助手だ。
第1発見者のフリをして、最初に現場に駆けつけたハナに罪を被せようとしたのだろう。
それを指摘すると、研究者は言葉に詰まったようだった。
「う、そうだな……。けれども、やはり、わたしだけが貰う訳にはいかない! 後で必ず連絡しよう!」
私は適当に返事を返したのだった。
すると、これまで黙っていたハナが「先生」と、声を掛けてきたのだった。
「先生、あの、私……」
「ハナ君」
ハナは顔を上げると、私をじっと見つめたのだった。
「……帰ろうか」
「はい!」
ようやく笑ったハナに、私も笑い返したのだった。
ーーこれが、かつて何も植物が無かった「レコウユス」に、最初に花を咲かせたフルレ男爵の話である。
フルレ男爵が咲かせた「レジーナ・フルレ」は、レコウユスの広い地域で咲く事になる。
「惜しみない愛情」と「親愛」。
この2つの花言葉を持った「レジーナ・フルレ」は、男女の恋の花とも呼ばれるようになるのだった。
それは、まだまだ先の話ーー。