青い星を君に捧げる【壱】
私の方が足は早いからそれなりに距離ができる。階段をとりあえず駆け上がって屋上まで行った。あそこに行けば誰か…。

扉を大きくあけて素早く閉める。

「あれ、ここ溜まり場の逆側の屋上?」


向こう側に溜まり場がある。ここ反対側の棟の屋上だ。水の入ってないプールが大きく場所を占めていた。


「いたっ」

後頭部に何かが当たった。別に痛くはなかったけど反射的に声が出る。下を見るとペットボトルのキャップが。


飛んできたであろう方向を見ると湊がいた。私が入ってきた扉の上の高くなったスペースに胡座をかいて見下ろしている。


犯人はアイツか。


キャップを拾い上げて、湊のいる場所に上る。


「ちょっとゴミを投げ飛ばさないでよね」


そばに置いていたボトルを取りキャップをつけてから突き出せば、私の顔をじっと見た後素直に受け取った。

私は湊の隣に腰を下ろした。久しぶりにこんなに近くにいる。


「最近荒れてるんだって?」

「9割方誰かさんのせいでな」


やっぱ私のせいじゃんそれ。

小言が心に刺さる。謝罪するべきなのか首を傾げていると、屋上の扉が開いた。


誰だろう…と下を覗き込む。そして入ってきた人物を目にして固まる。


そこにいたのはさっき撒いたはずの室井先生だった。咄嗟に首を引っ込めて湊の背中に隠れる。


「んだ。ひっつくなあちい」

「し、静かにして……っ」


できるだけ小さくなって身を潜める。見つけないで、お願い。湊のシャツをぎゅっと握りしめた。


「オイ。いい加減___……」


暑さから私を剥がそうとする湊は手を伸ばす。だけど何かから逃げるように身を隠す姿を見て、湊の動きは止まった。


「あーきみ!ここらへんで茶髪の女生徒見なかったか?」


下にいた室井先生は湊を見つけたのか声をかける。


「来てねぇ」

「そうか、ありがとう」


室井先生が屋上から出ていく。そして扉が完全に閉まった。


「はぁ〜〜。ありがとう助かったよ」

「あんな教師いたのか」


「最近きた教育実習の先生だよ。目つけられてるっぽいんだよね」


ふーん、と湊は興味なさげに先生のいない下を見つめる。


「おい、スマホ。寄越せ」

「え?いいけど……変なことしないでよ」

ポケットから出してスマホを渡す。湊はパパっと画面を操作すると耳にスマホをあてた。

この男……人のスマホで一体どこに。


その時湊のスマホが音楽を鳴らした。


「自分のスマホ鳴ってるよ?」

「鳴らしてんだから、ったりめーだろうが」

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