青い星を君に捧げる【壱】
……なぜ自分のスマホにかける?ああ、もしかして


「自分のスマホ探してたの?ちゃんとポッケに持ってんじゃん。灯台下暗し、的な?」

「あ“あ!?んなわけねぇだろぉが!!」


湊は雑にスマホを投げて返した。

「おっとと」

「…なんかあったらかけろ」


別にお前は他にも頼るやついると思うけど…と首の後ろを触りながら呟く。

そっか。なんだかんだ心配してくれてんだ。


「何もなくてもかけていい?」

「……変なことで電話してくんじゃねぇぞ」

___________
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放課後。

「はぁる!帰ろ」

ずっとサボっていた彼方が迎えにきてくれた。きっと慎たちも先に行って待っててくれているはず。

「ごめん!トイレ行くから先行ってて!」


かばんを持って教室を出る。この学校、元男子校らしいから遠くにしか女子トイレないのがネック。聡太郎に頼んで増設してもらうかな。



トイレから出てハンカチで手を拭きながら玄関に向かっていると、後ろから私の名前を呼んでいる気がして振り返ると

「げっ」

室井先生だ。

「本郷さん。すぐ終わるのできてくれませんか?」


「はぁ。手短にお願いします」


室井先生に連れられたのは学校の端も端。こんなとこあったんだレベルの場所。なんでこの先生はいつも人気のないところで話したがるんだ。みんな待ってるのに…。


「レディファーストですよ」


「…どうも」


教室に入ってかばんを机に置いた。


______ガチャ


「なぜ鍵を閉めるんです」


それまで真面目な顔をしていた室井先生はニタァと不敵に笑う。

……はめられたか。


室井先生(もう先生って呼べないけど)はどんどん私に接近し腕を掴んだ。感触が気持ち悪い。


「離してください」


「やっと二人きりになれたね、波瑠」


まさか先生をボコるわけにもいかない。人が通ることもない教室内でいやらしい笑みを浮かべる男と二人きり。


これって『絶体絶命』ってやつ!?


掴んだ腕をスリスリ触んな。そしてニヤニヤ私を見るな。


「きみを一目教室で見た時から好きなんだ。もう我慢の限界だ、もっと触れさせて」


腕を掴んでない手で体に触れてこようとした室井に恐怖を感じ、スカートであることも忘れて足を振り上げた。


「おっと」

「話がないなら帰らせてもらう」
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