青い星を君に捧げる【壱】
素早くかばんを取り、肩にかけ教室を出ようとした。

「いいの?きみが仲のいい佐久間。留年させるよ」


こいつ…人質を取りやがった。ほんと碌でもない男だな。


「はああ。何が望みなの」

ポケットに手を突っ込んでスマホの画面を操作する。アプリを感覚で開き適当に電話をかけた。


「そうだね、まずこっちおいで波瑠」


机に寄りかかりながら私を手招く。時間を稼ぐようにゆっくり近づいた。私の両手を掬うと力を込めて握られる。


満足そうに笑う室井に殺気立つ。


「美しい唇だね」


美味しそうだ、室井が目を閉じて顔を近づけてくる。唇がどんどん迫ってくる。



その時だった。鍵がかけられたはずの扉が吹っ飛んだ。パラパラと粉が舞う中に立っていたのは菫青石の目でこちらを鋭く睨む湊だった。


「いますぐその女から手ぇ離せ」


「お前は屋上にいた…こんなことしていいと思ってるのか!!」


「見られちゃまずいことしてたのは貴方でしょう。室井先生…いや先生と呼ぶのも悍ましい」


遅れて入ってきたのは聡太郎だった。後ろには慎や彼方、杏里もいる。


「りっ、理事長!!」


「波瑠大丈夫か?あとは俺が片しとくからアイツらと帰っててくれ」


聡太郎がを押して私を湊に預ける。湊は未だ室井に威嚇し続けていた。


「行こう湊。ここに長居したくない」


Tシャツの裾をチョイと引っ張り催促する。湊は喉まで出てきた罵声を飲み込み、私の手を取ると慎たちに続いて教室を出た。




「……みんなありがとね。いや〜助けてくれてなかったら今頃どうなってたか」


なんだか重苦しい空気を濁そうと冗談っぽく喋るが、直せないと分かって歯切れが悪くなる。


「でもまさか慎とか彼方じゃなくて湊に連絡するなんてな」


「あの電話、湊にかけてたんだ」


「テメェから連絡きて何かと思ったわ」


「最後に電話したのが湊だったから、一番上に湊がいたのかも」


どっちにしろありがと、と背中を思いっきりバシンッと叩く。


「痛ってぇなぁ!!何すんじゃ!」

「あはは!!」


次の日学校に行けば室井はもちろんいなかった。それに加え聡太郎と出張から帰ってきた高田屋せんせーの過保護度がより一層増していて、うざい。
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