青い星を君に捧げる【壱】
《side.風間湊》

気がつけば大きなスクリーンがあって、多くの座席の一つに座っていた。映画館か。

上映されている映像をぼーっと眺める。そしていつしか気づいた。俺はその物語を知っている。

見てもいないはじまりを知っている。それに終わりも。

だってこれは……俺の物語だ。



0歳、風間香織の腹から誕生。
幼稚園とかには通えなかった。

6歳、田舎町に母と引っ越し。
_____小学校入学。


俺の小学校の同級生の人数は18人。少人数の小さな学校だった。こんな日本人見た目だから友達なんかできるはずもなく。


朝起きて、飯食って、授業受けて、帰って…。毎日同じことの繰り返し。


そんな毎日を変えたのは6月という中途半端な時期に転校してきた女の子だった。俺と同じく日本人離れした見た目。

というか彼女は日本人じゃないのかも。ブロンドの髪に碧眼。名前だってカタカナばっかりだった。


黒板に書かれた名前。リリィと書かれていた。苗字は長くて覚えてない。


リリィは俺同様クラスに馴染めないようだった。どこか別世界の登場人物のようだった。『作り物』その言葉がぴったりだ。


リリィはいつからか俺の後ろをついて歩くようになって、最初はうざかった。だけどどんなに撒いても毎日一生懸命ついてこようとする姿がちょこまか愛らしくて、気づけば俺も横にいることを許した。


「もう暗くなってきたけど…門限とかないんか」


「なんだと、思う。誰も私のことなんか心配しないから」


俺たちは孤独だった。
生まれた時からずっと。


そんな共通点で俺たちは繋がってた。



「俺ん家で映画見ようぜ。借りてきたんだ」


「うん」


リリィの手をとって家まで歩いた。冷たい手だった。

映画は有名なものだった。家出した少年たちが線路の上を歩いて旅をするもの。


「……私も、こうやって自由になりたい」

ソファの上で体育座りをしてみていたリリィが足に顔を埋めながら言った。俺はこの時なんて声を分からなかった。ただ隣にあった小さな手を握った。


彼女のヒーローになれたなら。何回も考えた。でも決まって最後には俺にはヒーローになんかなれないと完結する。


季節は巡ってリリィと出会った梅雨の時期は過ぎ、夏休みになっていた。毎日近所の海の見渡せる丘の公園の滑り台の下で待ち合わせている。
< 108 / 130 >

この作品をシェア

pagetop