青い星を君に捧げる【壱】

黒鉄くんの後ろに乗せられて数分。着いたのは港が近くにあり潮の香りが漂う大きな倉庫。

「うわお思ってたよりもビッグだねぇ」


「そうでしょ~夜になると人も大勢来てもっとにぎやかになるんだよ」


いつの間にか一緒についてきていた佐久間くんが自慢げに話す。私たちにはお構いなしに風間くんと黒鉄くんが並んで歩いて行った。

「あ、のさ一応聞いときたいんだけど、本当にあの二人って出来てないんだよね?」


「う、うん……多分。だけど二人とも女がいるとかって話も聞かないから怖いよ」


倉庫に1歩踏み込むと先程までの騒ぎがピタリと止み、私たちの方へと視線が集中した。


「こ、こんにちは。慎さん、湊さん、彼方さん……それと、えっと……」

青龍幹部以外のメンバーで1番偉いのか、男の子が代表して挨拶しに来た。それを黒鉄くんが軽く受ける。


「ああ、コイツは今日転校してきた本郷波瑠。西から来たらしいから暫くは監視するためその辺ウロチョロしてる」

そう風間くんが変な紹介をしたので誤解されては困ると改めて自分で言おうと1歩前に出る。


「2年の本郷波瑠。疑いが晴れたら直ぐに関係は断つつもりだけど、それまで我慢してほしい」


「……ふふっ、青龍にそんな関心のない人初めて見ました。勿論気に食わない奴もメンバー内にはいるでしょうけど、僕は歓迎しますよ、波瑠さん。僕は2年B組の坂田優(サカタ ユウ)と言います」


驚いた。柔らかく微笑むその姿に笑い返した。握手を求めて坂田くんは手を私に伸ばす。

「私は2年A組。よろしくどうぞ、坂田くん」

「はい、ぜひ。優って気軽に呼んでください」


優の握手に応えると、彼の背後でも「よろしくー」と口々に言っているメンバーに手を振った。……可愛いヤツら……。


どうやらよく思ってないメンバーもそりゃいるようだけれど。挨拶してくれたメンバーの陰でコソコソと話している子たち。何か仕掛けられるかもなぁ。


「え〜、優だけ名前呼びズルい!!俺のこともこれからは名前で呼んでよ!」


「わかった!わかったから落ち着いて、彼方」


優を羨ましく思ったらしい彼方がグイグイと私に迫ってきて、それを手で制す。彼方の後ろにいる優と目が合い苦笑いした。


「……優。アンリ…いるか?」

「どうでしょうか、朝から出ていった事はないので恐らくいらっしゃると思いますよ」


「なら、次はアイツか……」

そう言って歩き出した黒鉄くんに皆ついて行く。

「じゃ!また後でね!」

優たちメンバーに軽く手を振り、私は遅れまいと後ろを追った。

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