青い星を君に捧げる【壱】
リリィの着替えになりそうなものを抱えて脱衣所に戻り投げ入れる。シャワーの音が響いていてしっかり浴びてることに安堵した。


鉢合わせになったら気まずいと脱衣所を出てキッチンへ向かった。冷蔵庫や棚から飲み物食べ物を取り出し、近くにあったカゴに突っ込んだ。


そのかごを持って2階に再び駆け上がった。部屋のクローゼットから適当にリュック二つを取り出してカゴに入れた食料を分けて入れた。それから机に並べておいた金とナイフなども入れる。


___1時間後

俺もシャワーを浴び終わって二人で部屋にいた。


「何するつもりなの…」


「何って、逃げんだよ」


充電がフルに入った携帯から充電器を抜いて、ズボンのポケットに電源を落として入れた。


「俺と二人で逃げよう」


そうして始まったのは俺とリリィの逃避行の旅だった。

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まず俺たちはこの町を離れた。いつかに見た映画のように廃線になった線路を伝ってひたすら歩いた。

「なんでついてきてくれたの」


「……いい機会だったんだよ。自由になりたかった」


「じゆー?」


「おう。俺たちにはあの町は生きづらかった、そうだろ」


「……湊が言うなら、そうなのかも」


微妙な返答をするリリィを小突いて線路の上から落とした。ムスッと頬を膨らませて怒る彼女の頬を両手で掴んで空気を抜く。


俺たちの旅は小学生らしく質素なものだった。寝床は公園。飯はありったけ持ってきた金でコンビニで凌いだ。


「お前、ハーフかなんかか?」

「うん。お母さんがイギリス人」


「ふーん…。でお前は何に悩んでるわけ」


こいつは時々険しい表情をしていた。気づいてないふりしてたけど、俺の我慢も限界だ。


「聞いてくれるかな…あの日のこと」

俺は手に持っていた残りのおにぎりを全部口に詰め込んでゴミをぐしゃりと握り潰した。
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