青い星を君に捧げる【壱】
《side.風間湊》
リリィの話は現実離れしていて壮絶なものだった。嘘かと思ったけれどリリィの表情が強張るたびに、それは本物なのだと俺に打ち付ける。


「これがぜんぶ。それでも湊はずっと一緒にいてくれる?」

「あたりまえだ」

リリィを抱きしめる。夏だというのに彼女は震えていた。

「おまえは何にも悪くねぇよ」

___________
_______
___

俺たちはひたすら歩いた。大人たちに追いつかれないように。それでも昨日はリリィの家の大人に追いかけられた。なんとか逃げ切ったけど。


「鬼ごっこみたいだね」

茂みに隠れながらリリィは楽しそうに言った。繋いでいた手はもう震えていないし温かかった。

いつか思っていたこと“彼女のヒーローになりたい”。俺は話で出てきた流水という男のようにリリィを見捨てずに彼女をちゃんと守れてるかな。


「俺はさ、リリィのヒーローになれてるかな」


終わりのない鬼ごっこが続く日々の昼間、俺は聞いた。

「湊が私の手を引いてくれるようになってからずっと湊は私のヒーローだよ」


リリィはずっとヒーローだと思ってくれていた。

____だけど俺は重要な時に彼女を救うことができなかった。
< 114 / 130 >

この作品をシェア

pagetop