青い星を君に捧げる【壱】
いつになく追ってはしつこく俺たちを追いかけてきた。多分本気で捕まえにきてる。

「待て!!」
「そっち行ったぞ」

リリィの手を引っ張り必死に逃げる。迫ってくる鬼たちの声にリリィは楽しそうにしている。それにつられて俺もこの状況が楽しくなってきた。


「あはは!!楽しいね!!」

もう隠れるようなことはしなくなっていた。これまで隠れるように生きてきた反動からかバカみたいにはしゃいで走る。


小学生の足には限界がある。大人にはやはり敵わない。いつの間にか俺やリリィの家がある田舎町に戻ってきていた。誘導されたのかもしれない。

俺たちの旅の終わりはいつもの待ち合わせ場所である海の見える丘だった。


もう逃げ場はなくて崖に追い込まれた。今は見つかってないけど時機に見つかる。


「俺が気を引くからその隙に……リリィ?」


リリィは繋いでいた手を離すと俺に抱きついた。これまでにないくらい強く。


「もういいよ、ありがと。湊がいてくれて楽しかった。じゃあね」


「は……?っ、リリィ‼︎‼︎!」


そして彼女は崖から笑顔で飛び降りた。


____湊はずっと一緒にいてくれる?

______あたりまえだ


俺はリリィを追いかけて飛び降りれなかった。怖かったんだ、死ぬのが。


リリィが落ちていく瞬間がスローモーションのようにやけにゆっくり見えた。


「うわあああああぁあぁぁぁぁああ」



8月31日金曜日。


8月の空がうざいくらい綺麗だった。それから俺の世界は止まったまま。


そしてリリィのいない9月がきた。
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