青い星を君に捧げる【壱】
いくら強いと言われても所詮俺らは中学生で。


「オイオイ!!大人舐めたら痛い目見るって教えられなかったか?あ"??」


繁華街を歩いている時に肩がぶつかって喧嘩に発展した。相手は大人…というか多分犯罪組織の奴らだと思う。それにこっちは2人なのに対し向こうは約10人。こっちが不利なのは目に見えていた。


俺も慎も辛うじて膝はついているが、手を地面に付けてほぼ土下座のような体勢を取らされている。


「さぁどっちからやってやろうか」


重たい頭を上げるとそこには鉄パイプをまるでバットのように振り回している男が。


「殺さないようになwww」


俺たちを取り囲んで楽しむ男たち。あんなの一発食らったらひとたまりもない。


「歯ァ食いしばれよ!!」


グッと頭を下げた。だけど来るはずであろう衝撃は来ない。目を開ければ今鉄パイプを振り落とそうとした男が伸びている。


「だ、誰だ!!おまえ!」


男たちに囲まれているせいで誰がそこにいるのか見えない。それでも俺と慎は一時的だとしても救われたのか?


「悪い大人たちが寄ってたかって何をしているのかと思えば、おまえらハエ以下だな」


______ゴキっ


一人、また一人と俺たちの周りにいた影は消えていく。そして最後に立っていたのは一人の男だった。


その人は俺たちとは違って小柄だけれど、オーラが輝いていた。


「怪我は?」

男は両手を差し出す。取ると俺たちを立ち上がらせた。


「深くない、ありがとう」


慎は額に横に切られた切り傷を触りながら言った。


「おまえ、強いんだな。どこのグループなんだ」


「うーん…」


_______ピリリリリ


男がポケットからスマホを出し、画面を見つめる。


「もう行かなきゃ。また次会ったら話そう」


踵を返し、去ろうとする後ろ姿。特服は着ていなくて、これを逃したら本当に再会できない。


「名前は!!!」


男は歩みを止めて視線を少しだけ俺たちに向ける。背後には睨むような満月。かっこいいと思った。この人のようになりたいと。


「___ツキ」


「つ、き??」


「お前ら二人でいないで仲間を作りな。きっともっと強くなる」


ツキと名乗ったそいつは片耳からピアスを外すと、慎に大きく弧を描いて投げた。


「やるよ。いつか胸を張って良い仲間と出会えたと言えるようになったら返しに来い」



_______約束だ


俺も慎もそれ以上ツキに声をかけようとは思わなかった。


「なぁ、湊。もっと強くなろう」


「ああ」
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