青い星を君に捧げる【壱】
「おーい起きろ」

俺たちを連れてきた男はガンっとソファを蹴っ飛ばして寝ていた人の睡眠を無理やり解いた。


「うーん…なにぃ??」

「青龍に入りたい野郎が二人うろついてたから連れてきた、総長…しっかりしてくれ」


「総長……ああ」


寝ていた方の男はまだ眠たそうに起き上がった。この人が、青龍総長か。くわぁ…と大きく欠伸をしながら体をポキポキと鳴らす。


「そこ、座ってよ」


未だドアの前で立っていた俺たちを総長は自分の向かい側のソファを指差した。


「えっとーじゃあ名前から聞こうか」


本当にこいつが“あの”青龍総長なのだろうか。なんかカリスマ性に欠けるというか…。


「黒鉄慎です」
「…風間湊」


俺の不審さに気付いたのか慎は開いていた足を少し動かしてトンっと膝をぶつけてきた。


「慎に湊ね。ふーん、その制服見る限り青龍に入るつもりで翔陽高校にきた感じか…じゃあなんで青龍に入りたいのか聞かせてもらおうか?」


俺たちは今この目の前にいる男に試されているんだ。ここでヘマしたら二度と、この街には来る意味がなくなる。


俺たちが青龍に入りたいワケはツキに憧れて、もう一度会えたなら胸を張って約束を果たすためだ。…でもそれを言ったら総長の気が悪くなるのは目に見えてる。ここは嘘つくしか……



「約束したんだ、月桂樹と」

「慎!!」


「ツキと?」


案の定総長の表情は険しくなり、目を細めて慎を見る。それでも慎は続けた。


「俺たちは二人でいればいい、最強だ。そう思ってた。だけどツキは『仲間ができればお前たちはきっともっと強くなる』って。だから俺たちは青龍に入って仲間がどうゆうものなのか知りたいんだ」


「…そっちのお前は」


慎をまっすぐに見ていた視線が今度は俺に移り変わった。


「俺は……」


慎が最初に言ってなきゃ、俺はウソついてた。青龍の2人は俺たちの真意を見抜いてる。さっきから貫くその視線が物語っていた。


「俺は慎を支えていきたい。こいつは青龍総長になる男だって思ってる。そりゃ喧嘩は俺の方が強い…だけど人の上に立つということは強さだけじゃないだろ?」


力で人を統率するのは簡単だ。だけどそんな関係はいとも簡単に崩れ去る。垂れていた頭を上げて総長と向き直った。


「俺たちが進むべき道は、ツキが作った道じゃない。自分達で見つけた険しい道だ。青龍ならその険しい道の歩き方を知れると思ったんだ。仲間とな」
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