青い星を君に捧げる【壱】
帰って二度寝できる気分でもなく、湊の痕跡を求めて青龍の倉庫にゆっくり歩いていた。


〜〜♪

「はい、もしもし」


電話が鳴って出ると彼方で、聞こえる声は激しく動揺しているようだった。落ち着くように宥める。

「わかった、今ちょうど向かってたから行く」


青龍倉庫近くに行くと彼方と杏里がしゃがみこんでいる。寄ると慎が横たわっていた。


「慎!どうしたの!!」


「メンバーが最初に気がついて僕たちに報告してくれたんだ」


「むやみに動かすのもダメかと思って様子を見てるんだけど」


慎の首に手をつける。正常に動いてはいるから問題ないだろう。


「ん?」


首が一部赤く腫れていた。これは、誰かに殴られた痕?


「とりあえず起こしてみようか、慎!慎!!」


杏里が声をかけながら体を揺さぶった。僅かに手が動いて、瞼が上がる。目を開いても少しボーッとしている慎。


「しぃぃんんん!!!心配したんだからね!!」


彼方が慎の腕を掴んでプンプンと可愛らしく怒る。そんな彼方を杏里がやれやれと宥めた。


「……み、湊は?」


慎が体を起こしながら聞いた。彼方と杏里は2人して頭を横に振る。


「慎が倒れてるのに気づいて1番に連絡したんだが、いくら経っても電話に出ないんだ」


「なにがあったの?慎」


私も彼方が掴んでいた慎の腕に触れる。冷たくなっていた。


「ごめん。杏里、彼方、波瑠。湊、止められなかった」


「へ?」「は」


やっぱりそうか。慎は人一倍観察力が優れているから湊の少しの変化にも気づいてた。そして、今日いなくなることを勘づいた。


「え?は、アイツ裏切ったってこと?」


酷く傷ついた表情をした彼方。声も出ずに固まっている杏里。


「青龍は大切な場所だとか、慎と二人で最強だとか言っておいて…勝手に機嫌悪く暴れて、勝手に消えるのかよ!!」


彼方が目にいっぱいの涙を溜めながら叫ぶ。その悲痛な叫びは私の胸にも重くのしかかる。

私がこんなに悲しいんだ。三人の方が湊と一緒にいる分もっと辛いはず。


「彼方…きっと湊にも訳g「湊のこと恨まなきゃいけないのに…なのに!!なんでこんな時に限ってあいつの笑ってる顔しか思い浮かばないんだよ!!」
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