青い星を君に捧げる【壱】
ちょっと貸して、とノッポの持つ軍手をはめて炭の位置を微調整。再度火のついた着火剤を入れる。
「火は酸素がないと激しく燃えないの…習ったでしょ?だからこうやって空気が回るようにしなきゃ、常識よ。ほら!!ノッポはうちわで空気送る!メガネとミドリ髪は肉の準備!!!」
「ノッポ…」
「メガネ…」
「ミドリ髪…」
「ほらっ!はやく!!」
「「「はっはいッついて行きます姐御!!!」」」
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最初の態度はどこへやら。すっかり3人は私の事を『姐御』と呼び慕ってくれた。これがいい方向に転んだのか何なのか分からないが、仲良くなれた。
「俺たち姐御のこと勘違いしてました。てっきり幹部の皆さん目的で青龍に潜入したのかと……」
「アッハハハッ!!!逆よ逆、今では青龍のみんなに対して愛着湧いてるけれど最初は無理やりよ、フフ」
つい最近のことを懐かしむように3人に話した。青龍幹部達との出会い、監視されることになった経緯。
「副総長はまだ姐御のこと認めていないようですが、だけどいつか認めてくれますよ。だって姐御は素敵な方ですから」
「そうかな…」
もう随分と辺りは暗くなり各班でのバーベキューは終わっているようだった。遠く、喧騒から離れるように陣取った幹部たちの班に目を向ける。
「副総長もきっと見つけてくれるはずです。姐御の素敵なところ」
私、メガネ、ノッポ、ミドリ髪のヘンテコ4人組のほんの少しこそばゆい話は燃える炎が消してくれた。
𓂃◌𓈒𓐍
____同時刻
木に背を預けると木1枚隔てて向こう側に気配を感じた。つい先程、《せっかく来たから話したい》と随分と女々しいメッセージを送ってきたヤツがバーベキューを楽しむ皆に隠れてやって来た。
「久しぶりだね、慎。元気しとった?」
「……来てたのか」
返事になってないよ〜とケラケラ笑う声が届く。傍(はた)から見れば俺が1人で笑っているようだから早くやめて欲しい。
「杏里がね連絡してくれたんよ。留年なんかしたくないからね、高田屋先生にも会ってね出席扱いにしてもらった」
「そうか……悪かったな。また……青龍から離れるような真似させて」
「いいんよ!それに俺も気になってたから。1年前に消えた第12代目白虎総長『月桂樹』を」
第12代目白虎総長『月桂樹』
____通称、ツキ。
白虎総長には代々その人にあった花言葉である花の名前を付けられる。