青い星を君に捧げる【壱】
『月桂樹』の花言葉は、勝利・名誉・栄光。その名の通りツキは歴代でもトップクラスの実力者で白虎を統率していた。
しかしその姿は1年前から消えたのだ。すぐに第13代目が就任するかと思ったが未だその気配はない。ツキの時の副総長が今は治めている。
「実は西に1度赴いてね、白虎幹部にコンタクト取ろうとしたんだけど…なかなかシッポ掴めんくてな。さすがやわ」
「…白虎は何か隠しているのか…」
「どうだろうか、奴らは元々秘密主義のようわからん連中だからなぁ〜」
「おーーい!!しーん!何してんだ〜??」
遠くでバーベキューしていたはずの杏理が手を大きくブンブン振りって注目を集めている。
「ククッ、杏理のやつも相変わらずだな。呼ばれているようだし俺も調査に戻るよ。じゃあな」
「ああ、そっちも気をつけろよ……ケント」
帰り際、横目で木の後ろに目をやると彼は手を挙げ去っていった。フッと笑みをこぼすと騒いでいる彼らの元へゆっくりと歩みを進めた。
______________2人の密談の裏で…
慎はスマホの画面を見るなりのっそりとどこかへ消えていった。そしてこの場に残ったのは、杏理と彼方そして俺、湊である。
「もぉー湊!!ちゃんと肉みててよ〜丸焦げになってるよ!!!」
どうやらせっかく焼いていた肉を湊が丸焦げにしたらしい。彼方の持つ串は黒い物体へと成り下がっていた。
「黒くなるのが嫌なら彼方が見てればいいだろ」
「むぅ……そんな亭主関白男だと嫌われちゃうよ、波瑠ちゃんに」
「ハア??俺がアイツに嫌われるのが嫌だと思うか?んなこたぁねえだろ」
女嫌いであると分かっているはずの彼方。なのにどうしてそんな事を言ってくるのか。
「僕は波瑠ちゃんと湊、仲良くできると思うんだけど……今日だってまさか2人が話すなんて思ってもみなかった。どうせ湊は無言を突き通すだろうって」
____護られるんじゃなくて、護りたい。もちろん風間くんもね。
「それがどういう風の吹き回しなのか話した上にちゃんと荷物も持ってあげてた」
「…あんな賑やかな女より静かな女の方がマシだ」
「あっそうだ波瑠チャンのことで気に取られてたけど、金曜日に会いに行く女の子はどうしたの?」
毎週金曜日の夕方。西にある、とある街の海が見える丘。そこで俺は幼い時に約束した女の子と再会するため足を運んでいる。
「会えてねぇよ。そもそもアッチはもう忘れてる」