青い星を君に捧げる【壱】
「俺はお前が青龍を名乗るのは認めねえ」
ゆっくりと振り返ると青い特攻服を身にまとった風間くんが蒼い瞳をこちらに向けていた。
「湊、まだそんなこと…波瑠ちゃん?」
反論してくれようとした彼方を手で制し、風間くんに微笑んだ。
「風間くんがいつか認めてくれるように私頑張るから」
「……ふーん、そんな日隕石落ちるくらいの確率でぜってぇーねえけどな」
そう言うと颯爽とステージから特攻服を脱ぎながら降りて、慎に耳打ちした後倉庫から出ていった。
ガヤガヤと賑やかな倉庫でも慎が私を呼ぶ声はしっかりと耳に届いた。
「……アイツのことは気にすんな……今日は宴だ」
「おっ!姫着任おめでとうの宴か!!おらっ皆準備すんゾッ」
杏理の声掛けで皆が一斉に動き出す。隣にいた彼方も嬉しそうな声を上げ、私に顔を向ける。
「ほんとに湊のことは気にしないで、アイツ金曜はいつもちょっと用事があってすぐに帰るんだ」
「用事…?」
「そう、用事。俺たちの口からは伝えるのはきっとダメだろうから、言えない。ごめんね」
「ううん、平気。人には隠し事の一つや二つあって当たり前だもの」
そう、隠しておきたいことは沢山あるに決まってる。…私にだって。
それからは夜遅くまでドンチャン騒ぎだった。オードブルやお菓子が並べられ各々はしゃぎながら楽しんだ。
私の所にもメンバーが何人かずつグループになって訪れてくれて、暇になるようなことはないようにしてくれていた。
「いいところだね、ココは」
その人の流れも止んで気づけば総長である慎が騒いでいるメンバーを見つめながら隣にいた。
「…当たり前だ、ここのヤツらは良い奴ばっかだ。だから…失いたくない。だから、俺が護るんだ。初代からずっと受け継がれ続けたこの……場所を」
「俺たちで、でしょ?」
「1人で護ろうなんて水臭いよね。それに今は居ないけどケントと湊もいるし」
杏理と彼方も騒ぎから抜け出し私たちの元に来た。
やっぱり仲がいいんだなぁ、青龍は。私も《あの場所》を思い出してクスリと笑った。
「何笑ってるの?波瑠チャン。楽しそうだね?」
「そうだね、とっても楽しいよ今」
____どうか、この平和な日々がずっと。彼らの思い出が私のように黒く塗りつぶされないように。
「ありがとう、私を青龍に呼んでくれて」
慎の特攻服の袖をちょいと引っ張り私の頭上にあるその黒い瞳を向けさせた。
「……ああ」
その不器用な無愛想な相槌に全てが込められている、そんな気がした。