青い星を君に捧げる【壱】
ノンちゃんと壱哉と怪我の手当に必要なものを揃えている時、1階から男たちの雄叫びが聞こえた。


「ふふっ、終わったみたいだね」


「それじゃあココからは俺たち救護班の出番だ!」


準備していた物をバラバラと袋に入れて幹部室を後にする。1階に行くとそこは血の溜まり場と化していて、誰のかも分からない赤が散らばっていた。


倉庫のシャッターは珍しく開ききっていて、狂乱のメンバーが肩を貸し合いながら去っていく後ろ姿が見受けられた。


壱哉とノンちゃんは既に治療を開始していて、私も遅れて作業に取り掛かった。


といっても、青龍側には大きな怪我をしている奴は見た感じいなくて、青アザになりそうだなぁってヤツ程度だった。


下っぱメンバーに消毒したりなんだりしていたら、疲れたのか地べたに胡座かいて談笑する杏理と彼方が目に入った。



「杏理、彼方。おつかれさま」


擦り傷で血が出ている2人に絆創膏を袋から取り出しいくつか手渡す。


「波瑠ちゃん!ありがと」


「俺たちの活躍、ちゃんとその目で見られた?」


「うん、凄かったね」


あまり感想を言うとボロが出そうでありふれた言葉をかけた。


「でもやっぱ今回のNO.1も湊だよなぁ~」


「そうそうアイツ慎が暴れないことをいい事に1人で半数近く倒しちゃって!!!」


暴れたりないじゃん、と不貞腐れる彼方と頷く杏理。


そんなふたりのいつもの会話に心が安心して。きっと大丈夫って信じてたけど心のどこかでは不安だったんだ。


私は座り込んでいた2人に腕を大きく広げて抱きしめた。…よかった。ちゃんとあたたかい。


「は、波瑠ちゃん…どうしたの?やっぱ怖かった?」


「ううん…みんなが無事で、安心した」


ギュッとさらに力を込めると、戸惑いながらも2人は私の背中に手を回してさすってくれた。


「あと、ずっと言いたかったんだけど…"ちゃん"付けじゃなくて呼び捨ててよ」


風間くんはともかく、杏理と彼方はずっと私のことを呼び捨てしてなかった。だけどそれじゃあ壁があるっていうか、むず痒かった。昔からずっと呼び捨てだったし。


「僕も思ってたんだ。"波瑠"って呼びたいなって」


「チャン呼びも卒業かー寂しくなるな」


「杏理のチャンって呼び方チャラいから前々から辞めて欲しかった」


「ええー悲しいこと言うね、波瑠」
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