青い星を君に捧げる【壱】
「……まるで過去にナニかあったみたいな言い方だな」


「……」


うん、と掠れたそばにいた慎に届いたかも分からないような声がでた。


「大切なモノがたくさんあったんだ。でも今のあたしには一欠片も残ってない」


ふわりと手に温もりが伝わった。……慎の手に包まれてるんだ。あの遊園地の時のように。


「俺にもいた。裏の世界では有名な西の暴走族《白虎》の月桂樹、ツキと呼ばれてた」


ピク、と肩が揺れた。だって私のなまえ…。そりゃあ有名だったけど。


「ツキは去年急に消えた。いくら探しても情報の1つさえ出てこない。だけど俺は諦めてない」


幻滅しちゃうよね、きっと。ツキの正体が私だって分かったとき。


その瞬間を想像して笑ってしまった。


「……なんで笑う」


眉間に皺を寄せながら不審そうに私を見る慎にますます笑いが込み上げる。その時、


「おーい慎。狂乱の奴ら追っ払っといたぞー」


慎を探すように大声で叫ぶ風間くんが見えた。


「風間くんが探してるし戻ろう、慎」


「……お前の大切なものに俺らは入ってるのか」


「ふっ、当たり前!」



多くのモノが消えたけど確かに新しく出来たものが私にはあった。


だから次こそはちゃんと守りたい。


____私の居場所


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