青い星を君に捧げる【壱】
匡と私は幼なじみで、彼は本郷家に出入りできるような存在だ。なので当然父とも面識がある。


「お盆には必ず帰ると伝えて」


「そうか、分かった」


「ねえアンタは何者なの?」


隣に座った彼方が会話に一段落ついた匡に問う。


「彼方の言う通りだ。勝手に来たかと思えば挨拶も無しとは…お前ここが何処か分かってる?」


対抗的な彼方と杏理に匡は気だるげに視線を移す。匡は恐らく私の現状を見に来たはずだ…東の暴走族と仲がいいと聞いて。彼はわざわざ私の居場所を脅かすようなことはしない。


だから変なことは言わないって信じてるけど……


「俺は波瑠の幼なじみ、匡だ。確かに挨拶がまだだったな…ここの頭はお前か、黒髪」


匡から1番遠い距離に座って傍観していた慎は黒髪呼ばわりされ眉間に皺を寄せる。いつも険しい目付きがさらに険しくなる。


「……ああ」


「強そうな男で何よりだ。初めまして東の暴走族、青龍さん。以後お見知りおきを。それじゃあ俺はこの辺で失礼する……またな、姫」


突然来たと思ったら掻き回すだけ回して匡は帰って行った。ほんとに何しに来た……。


「おいあの男相当強いだろ?」


匡が去った後も尚その影を追うように見続ける湊が言った。


「さあ…どうだろう、私は知らない」


彼方は私の顔を伺いぎゅっと腕に抱きついた。


「波瑠、どこにも行かないでね」


「……うん」

曖昧に薄く返事をした私は彼方に"約束"が出来なくて申し訳なく思った。





𓂃◌𓈒𓐍
月が怪しく輝いている。マンションの最上階のベランダの柵に寄りかかり久しく見ていなかったスマホの電源を入れた。


ロックを解除すると溢れるほどのメッセージが流れてきた。そこには懐かしい顔ぶれたちが。


それらに目を通すことはせず、私は登録してある多くの連絡先から1人の男の名をタップした。


3回ほどコール音が流れたのち、すぐに低く落ち着く声がスピーカー越しに聞こえた。


「もしもし、匡?」


電話相手からはガヤガヤと人中にいるような賑わいが聞こえる。たぶんあそこにいるんだろうなぁ~と予想が着いた。


『…電話してくるだろうと思ってた』


「そっかあー匡にはやっぱり何でもお見通しね」


『アイツらには言わないつもりだ。お前の居場所』


「うん、そこは信頼してるよ」


『今日見たお前が良い顔してたから…そっちでも居場所が出来たなら俺は邪魔しない。必要だろ?青龍が』
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