青い星を君に捧げる【壱】
7月7日、鵲の橋は彦星と織姫の元にかかったのだろうか。


ブンブンブン
そんな空の話の一方で青龍倉庫内外には沢山のバイクにまたがるメンバーたちがエンジンを吹かす。


昨日の最終打ち合わせで私は慎と共に車での参加が決定した。慎に一緒になんて悪い、と言ったが総長になった人は大抵車なのだとかで気にするなと言われた。


先頭を駆け抜けるのは杏理、彼方。そして重要な後方を任されたのは風間くんだった。


「おーい波瑠!!」


呼ばれて振り返るとバイクを押して近づくノンちゃんの姿。


「ノンちゃんも走るんだね!」


「あったりまえよ。なんてったって今日は青龍創立記念なんだからよ!」


「調子乗って怪我しないようにしなよ」


「おう、波瑠も俺のハンドルさばき見とけよ」


暴走ルートは毎年同じらしく、目的地は星空が良く見える山の中だとか。今日は快晴だから星が見えるといいなあ〜。


「……波瑠」


ノンちゃんと話していると黒塗りの車近くに慎がドアを開けて私を呼ぶ。来いってことか。ノンちゃんにコケないように念を押してから慎の開けてくれた車に乗り込む。



私が乗るとドアを閉めて集まった幹部たちに一言二言声をかけてから反対側から乗車する。


ブォンブォンブォン
杏理が始まりを合図するように倉庫のシャッターを開けて1番に飛び出す。私たちの乗った車を追い越してバイクが通り過ぎていく。


3分の2ほど行った後にようやく私たちの車も動き出した。半分よりも後ろ側の位置に私たちはいることになったようだ。


楽しそうにバイクを走らせるメンバーを車窓からただぼーっと眺めていた。私も一緒にバイク走らせたい、なんてこと口が裂けても言えない……


数十分走ると景色は山道になっていた。ここまで来ると他の通行車両はないので好き勝手バイクを走らせている。


その中でノンちゃんと優の姿発見した。優にちょっかいを出されて転けそうになるノンちゃんにハラハラしながらも笑ってしまった。


「……楽しいか?」

これまで静寂を貫いていて、もしかしたら寝てるのかもと思っていたが流石に起きていた慎。


「もちろん、連れてきてくれてありがとう」


それから慎が話しかけてくることもなく、ただただ星空をじっと眺めてた。空がいつもよりも近くなった頃車はゆっくりと停車し、車の扉が杏理によって開けられた。


「ここは……」


数多くあるバイクのライトが一点を照らしているのは何かの石碑のようなもの。
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