青い星を君に捧げる【壱】
《side.本郷波瑠》

私と慎のキス騒動から2週間。青龍は平和に過ごしていた。


「……波瑠…明後日用事あるか?」


基本的に何も無くても倉庫に来るのが日常になっていた私は今日もソファで雑誌を読んでのんびり過ごしていた。


「明後日は……」

幹部室の壁に貼ってあるカレンダーを見る。明後日は7月24日。


「明後日は実家から呼ばれてて帰る予定だったんだけど、何かあったっけ?」


「ええぇええ!!!波瑠、明後日帰省するの!?」


隣でスマホゲームをしていた彼方がスマホを投げ飛ばして叫ぶ。ソファに無事落ちたスマホの画面にはゲームオーバーの文字が。


「ええっと……夕方には帰ってくる予定だから、それからでもいいなら倉庫来るよ?」


青龍で何かイベントあったっけ?私どっかで聴き逃したりしてた?あれこれ考えるけど思い浮かばない。


「夕方…新幹線だろ?駅に迎えに行く」


慎が迎えに来る?なんの、ために?


「波瑠、疲れてなきゃ来てくれると助かるかなぁ。ちょっとその夜イベントするから」


私の頭いっぱいのはてなマークを見抜いたのか杏里が助け舟を出してくれた。


「わかった。着く頃になったら連絡するよ」


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7月24日

始発の新幹線に揺られ、地元近くの駅に着く。


「相変わらずの変装具合だな」


____ギクゥッ


そう、今日の私は変装していたのだ。ロングヘアのウィッグにメイクもバッチリ決めて、香水も振った。


なぜならここが《地元》だから。


いつ白虎のヤツらとすれ違うかわかんないし、アイツら無駄に鼻と勘が良いから念には念を。


そして私の完璧変装を見破ったのは、


「…なんだ匡か。びっくりさせんな」


連絡なしに現れる神出鬼没な男。


「いつものとこ行くんだろ?送ってこうと思って待ってやってたんだけど」


先日青龍に来た時とは違い、眼鏡もマスクもしていない。赤髪が風に揺れる。


「何でもお見通しなんだね、匡には」


「全部準備してあるから乗れよ」


黒塗りの車に寄りかかっていた匡は後部座席を開けて私を招く。そして閉めると反対側から隣に座った。


「…出せ」

「はい」


サングラスを掛けた運転手がアクセルを踏み車はゆっくりと走り出す。


景色は見慣れた街並みへと変わっていく。


「今日は白虎には行く気はないけど、来月には顔出すから」


「わかった。白虎もだが本家にも顔出せよ」


「うん」

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