青い星を君に捧げる【壱】
《side.阿久津匡》

3年前白虎の前総長である佑真さんは、ある抗争に巻き込まれこの世を去った。

佑真さんは自分がその争いで死ぬのを悟っていたのか、俺にハルへの3年分の誕生日プレゼントを預けていた。


『ハルに渡すかどうかは…匡が決めてね』


あの時このプレゼントの事がなければハルも佑真さんの後を追って死んでいたに違いない。


『せめて…俺の歳までは生きて欲しいんだ。3年あれば、また新しい恋を見つけて…それで"夢"を叶えてくれるはず』


____頼んだよ、匡


抗争前日に佑真さんはそう言って俺に3つの箱を手渡した。


そして今年、ハルは18歳。


佑真さんからの最後の贈り物になる。

毎年何を貰っているのか俺は知らない。でもどうか、明日もハルが生きていてほしい。


ハルの手が俺の持つ箱に伸びてくる。そして受け取るのかと思ったが、その両手は箱を持つ俺の手を包み込んだ。


「匡…心配しないで。私明日もちゃんと生きるから」


「…はっ?」


「手、震えてたから。その心配してるのかと…私ね、夢があるの」


「夢?なんの」


ハルは俺の手の中から優しく箱を受け取り抱きしめる。それは愛おしそうに。


「佑真の夢を今度は私が叶える。彼の夢の続きを私が歩いてく」


この顔を見て俺は心底安心した。ああ、まだ大丈夫。彼女はまだ生きてくれる。


______________
____
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「今日はありがとう。またね」


「…その事だが、当主様からの伝言で『盆には帰ってこなくていいが8月末の定例会議には出席するように』だそうだ」


「そっか!近くなったらまた連絡するよ」


じゃあ、と彼女は新幹線の時間が迫っているので足早に改札を抜けた。


「なあ!!また会えるんだよな」


改札の向こう側にいる彼女にそう大声で言った。ゆっくりと振り返った彼女は今日1番の笑顔を見せ、

「当たり前じゃん!白虎を頼んだよ」

今度こそエスカレーターで下へと下がっていった。

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