青い星を君に捧げる【壱】
《side.本郷波瑠》

新幹線を降りて駅の外に出てみれば、空は夕暮れ色に染まっていた。

慎が迎えに行くって言ってくれてたけど…いつもの感じだときっと女の子たちに絡まれてるはず。あの顔面偏差値だものしょうがないけど。


その分恐らく見つけやすい。……ほらね、女の子の塊の中心にはイケメンありって。


「どうしたものか…」


話しかけてもいいんだけど女の子たちに恨まれるの嫌だなぁ。西だったら白虎のやつが誰に絡まれていようと話しかけるんだけど、こっちでは地味にいきたいし。


うーん……と唸っていると「おい」と声をかけられる。


「…話しかけろよ」


「えーだって女の子との戯れ楽しんでるの邪魔しちゃ悪いじゃん」


「チッ…俺のあの顔が楽しそうだったか」


行くぞ、と目で合図され慎の後ろについて行く。歩いてきたのかな…。まぁ、ここから倉庫は近いし歩きたい気分だったのかも。


珍しく倉庫の正面シャッターは開放されてない。

「…少しの間……手貸せよ」

「はい?」


私が理解するよりも早く慎に手をすくわれ、そのままシャッター横の扉を開けて中に入った。


いつも眩しいくらいに明るい倉庫内が真っ暗。


____パンパンパン!!

突然左右前方から大きな破裂音が聞こえ、思わず慎の手に力を込める。次の瞬間には照明がパッと付く。


「「「波瑠さん、お誕生日おめでとう」」」


「…えっ!?」


驚いて隣にいた慎に目線を向ける。なんで、だって誕生日なんて言ったことないはず。


「実はね、この前無くしたって言ってた生徒手帳、僕のせいなんだよね」


私の考えを見通してか彼方がテープが出たままのクラッカーを持って話す。隣には杏里も。


「そうそう!波瑠の誕生日がどうしても知りたくて盗んじゃったテヘッ」


舌出しピースして誤魔化す杏里に、ゲシッと照れ隠しの蹴りを入れる。


でもこの場にはやっぱり風間くんは居なくて、ちょっぴり寂しい気持ちになる。


「……波瑠、誕生日おめでとう」


奥に行っていた慎が私に大きな花束を渡してくれた。


「これって!ユリ、だよね」


「ああ…彼方が波瑠の誕生花はユリだって」



まさか私にユリをプレゼントしてくれる人がまだこの世界にいるなんて思わなかった。ポロポロと涙が地面に落ちる。


「い、いやだったか?」


「ちがう…ちがうの。とっても嬉しい、ありがとう」



「波瑠!!こっちにおいでよ!たっくさん料理あるよ!」


彼方に手を引かれて倉庫の奥へと歩き出した。

< 58 / 130 >

この作品をシェア

pagetop