青い星を君に捧げる【壱】
「あっぢいー、おい彼方アイス取ってくれ」


「冷蔵庫のアイスなら昨日湊が食べ尽くしたじゃん。買ってきてよ」


8月に入り、青龍にも夏休みが来た。外から帰ってきた彼方と湊はエアコンの効いた幹部室のソファで溶けるように座る。


「最近2人とも忙しそうだね」


「だって明日から幹部で別荘行くでしょ?だからいない間の調整しなくちゃ。波瑠はもう準備した?」


「帰ってからするよ」


「波瑠、ちゃ〜んと水着持つんだよ」


「……うるさい杏里」


そう、青龍幹部+私で海の別荘に明日から2泊3日するのだ。なんでも慎のお父様が所有してる別荘らしい。…こいつなかなかのボンボンなのかも。


そして2泊3日の1日目。
私たちは車に乗って2時間かけて海の別荘に来たのだった。


「はい、これ。波瑠の部屋の鍵。荷解きしたら水着着て、海行こ♡」


杏里に渡された鍵。私は一人部屋で、風間くん・慎ペア。彼方・杏里ペアと3部屋に別れた。ちなみにみんな2階。


部屋に入るとホテルのスイートルームのような広さ。1部屋がこんなだからこの別荘こんなに広いのか…。


荷解きもほどほどにし、水着の上からパーカーを羽織った。水着は数年前に唯一の女友達とプールに行った時のもの。


「こんな布面積少ないやつだったっけ…新しいの買えばよかった」


白いフリルのついたビキニは、女友達が選んで無理矢理買わされたもの。


「まあ……アイツらといるから平気か」


羽織っていたパーカーのチャックをグッと上げた。
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ビーチに出ると既に慎たちがパラソルを広げていた。そしてさっきまで人があまりいなかったはずの砂浜には多くの男女が。


「この人だかりは何なの、杏里」


「やぁ波瑠!だって僕らだけでビーチいたってつまんないじゃん」


「つまりアンタが連れてきたってわけね」


手に持ってたスマホと財布の入ったポーチをブルーシートに置いてパーカーを脱いだ。

キラキラと輝く綺麗な海。海と空の境が分からないほどの青。

足をその水に付けるとひんやりとした感覚が伝わる。その冷たさが心地よくて何も考えずに足をどんどん奥へ奥へと動かす。


次の1歩突然足が着かなくなって体が海に飲み込まれた。さっきまで見えていた水平線が遠のいていく。

海面を掴むように手を伸ばすがそれは届かずに伸ばしたまま。

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